地価データを眺めていたら、東日本橋が「都心の余白」から「次に化ける街」になりつつあることが見えてきた
東京の都心部で「駅近」「複数路線」「日本橋アドレス周辺」「まだ再編余地あり」という条件を並べると、だいたい価格はすでに天井まで上がっていそうな気がします。
ところが、東日本橋駅周辺の公的地価や取引事例を追ってみると、ここは単なる“日本橋の東側にある街”ではなく、
都心アクセス・商住混在・建替え余地・広域再開発の波及という複数の材料を抱えた、かなり面白いエリアであることが分かります。
東日本橋駅は都営浅草線の駅で、すぐ近くに都営新宿線の馬喰横山駅、JR総武快速線の馬喰町駅があり、東京駅方面、日本橋方面、新宿方面、さらには羽田方面までつながりやすい交通結節点です。つまり「都心に近い」のではなく、「都心の中で複数方向に動ける」場所というのがポイントです。
数字で見ると、その変化はかなりはっきりしています。
東日本橋駅周辺半径500mの公的価格レンジは、代表的な地点でおおむね150万~330万円/㎡という水準。東日本橋2丁目の基準地価は、2022年106万円/㎡、2023年111万円/㎡、2024年125万円/㎡、2025年154万円/㎡と上昇しており、2025年の前年上昇率は+23.2%。
さらに、東日本橋2丁目の路線価相当額も2021年278万円/坪から2025年407万円/坪まで伸びています。
これだけ聞くと「もう高いのでは?」と思うところですが、広域の日本橋エリア平均公示地価は2022年582万円/㎡から2026年723万円/㎡へ上昇しており、日本橋本体の価格水準と比べると、
東日本橋はまだ“都心再編の波及を受ける余地”を残しているエリアと見ることができます。
東日本橋の面白さは、価格が一枚岩ではないところです。
清洲橋通り沿いのような高視認・高容積の立地では評価が高くなりやすい一方、裏通りの中小敷地や築古ビル付きの物件では、建替えや用途転換の余地が評価のカギになります。
公開取引事例を見ても、2021年以降の土地建物取引は6,100万円から20億円超まで大きく幅があります。
これは単に「価格がバラバラ」という話ではなく、東日本橋が小規模収益ビル、既存建物付き案件、中規模開発候補地、幹線道路沿いの高度利用地が同居する街であることを示しています。
完成された大型オフィス街ではなく、街区ごと、敷地ごとに使い方を組み替えられる余地があるというわけです。
実際、東日本橋で強いのは「オフィスだけ」「住宅だけ」という単機能ではなく、1階に店舗、上階にオフィスや共同住宅を組み合わせるような複合利用です。
駅近で人の流れがあり、周辺には業務需要も生活需要もあるため、働く場所、住む場所、立ち寄る場所を一体で設計しやすいのが特徴です。
久松小学校や複数の認可保育園、駅近のクリニックといった生活インフラもあり、日本橋・三越前方面にはCOREDO日本橋やCOREDO室町などの広域商業が控えています。
派手な大型商業施設が駅前にドーンとあるタイプではありませんが、日常の足元機能と都心商業の近さが重なっているため、
「平日は都心で動き、休日は日本橋側へふらっと出る」という暮らし方が成立しやすいエリアです。
さらに長期で見ると、東日本橋は日本橋広域再開発の“外縁部”としての魅力があります。
日本橋川沿いでは首都高速日本橋区間地下化と周辺再開発が進められており、日本橋一丁目中地区では「東京ミッドタウン日本橋」として大規模再開発も予定されています。
東日本橋そのものが巨大再開発の中心地というわけではありませんが、むしろそこがポイントです。
中心地の価格プレミアムを直接背負うのではなく、日本橋エリア全体の景観改善、回遊性向上、業務・商業機能の高度化による波及を受けるポジションにあります。
いわば、都心再編の熱がじわじわ伝わってくる場所です。
もちろん、何でもポジティブに見ればよいという話ではありません。東日本橋は低地系の地盤で、浸水リスクや液状化可能性、地下設備のBCP対応はきちんと確認すべきエリアです。また、商業地域・防火地域が基本で、容積率500~600%級のポテンシャルがある一方、前面道路幅員、角地性、附置義務駐車場、既存建物の解体費、テナント退去、建築費上昇などによって開発収支は大きく変わります。ただし、これは裏返せば「きちんと読める人にチャンスがある市場」ということでもあります。単純に坪単価だけで比べるのではなく、道路条件、容積消化、既存建物の状態、賃料の伸びしろ、出口価値まで含めて見ることで、街の価値がかなり立体的に見えてきます。
東日本橋をひと言で表すなら、「安い都心」ではなく「伸びしろの残る都心」です。
東京駅、日本橋、新宿、羽田方面へ動きやすい交通利便性があり、商業地域としての高い容積ポテンシャルがあり、既存の中小ビルや商住混在の街並みに再編余地があり、さらに日本橋広域の再開発波及も期待できる。派手なタワーや巨大商業施設だけで街の価値を測る時代ではなくなった今、東日本橋のように「住む」「働く」「貸す」「建て替える」「長く持つ」が同時に成立しうるエリアは、都心の中でもかなり貴重です。
結論として、東日本橋はすでに完成されたブランド街というより、これから価値の見え方が変わっていく街です。
幹線道路沿いの高視認立地はオフィス・店舗・共同住宅の複合開発に向き、東日本橋2丁目のような商住混在地は既存ビルを活かしながら将来の建替えを狙う中期戦略と相性がよく、狭小地や接道条件の弱い案件は慎重に見極める必要があります。
つまり、東日本橋は「全部が買い」ではありません。
しかし、駅近・複数路線・日本橋隣接・再編余地という条件を満たす物件を丁寧に選べるなら、都心の次の成長を取り込む候補地としてかなり有望です。日本橋の華やかさをすぐ横目に見ながら、日常と投資と開発のリアルが同居する街。それが今の東日本橋です。


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