この記事では、新興国通貨である南アフリカランドの投資環境について、2024年度を振り返ってみようと思います。
1. 南アフリカランド/円(ZAR/JPY)為替レートの年間推移と変動要因
2024年の南アフリカランド対円相場(ZAR/JPY)は、年初の1ランド=約7.7円水準から堅調に上昇しました。
年間の最安値は1月3日の約7.65円、最高値は7月10日に約8.92円を記録し、年間平均は約8.27円となりました。
年間を通じてランド高・円安の傾向がみられ、ランドは対円で約8%上昇しています。
変動要因: 前半はご存じのとおりですが、キャリートレードの流入がランド高を後押ししました。
日本では超低金利政策が続き、円が調達通貨として売られる一方、南アフリカは高金利通貨であり、低金利の円を売って高金利のランドを買う動きが活発化しました。
その結果、ランド/円は2024年初から上昇基調を強めました。
また、資源価格の上昇や2024年5月の南アフリカ総選挙への期待感もランド買い材料となり、ランド高・円安傾向に弾みをつけました。
南アフリカは金やプラチナなど資源国通貨の側面があり、これらコモディティ価格の上昇局面ではランドが買われやすい傾向があります。
一方、年央から後半にかけては世界的なリスク要因による変動もみられました。
例えば5月末の総選挙では、与党ANC(アフリカ民族会議)が初めて単独過半数を割るとの見通しが伝わり、将来の政局不安やポピュリスト政党との連立懸念からランドが一時的に対ドルで2%下落し、対円でも上値が重くなる場面がありました。
また、夏場には米国の景気動向や金融政策を巡る不透明感から世界的にリスク回避の動きが強まり、円キャリートレードの一時的な解消で円高・ランド安となる局面もありました(8月初旬にはリスクオフで円が急騰し、高金利通貨が売られる動きが観測されています)。
しかしこうした局面でもランド/円の下落幅は限定的で、総じてランドは堅調さを維持しました。
年末にかけては円側の要因として、日本銀行の金融政策修正観測が浮上したものの、依然として日南の金利差は大きく、円の上昇余地は限られました。
結果的にランド/円相場は12月には8円台中盤(12月の月間レンジ:約8.25~8.64円)で推移し、高値圏で年間を終えています。
2. 南アフリカの政策金利動向と中央銀行(SARB)の金融政策方針・声明
政策金利の推移: 南アフリカ準備銀行(SARB)は2020~2023年にインフレ抑制のため大幅な利上げを行い、2024年初時点で政策金利(レポレート)は8.25%という15年ぶり高水準に達していました。
2024年前半はこの8.25%を維持しましたが、インフレ率低下を受けて年後半に利下げサイクルへ転じます。
まず9月19日の金融政策委員会(MPC)で0.25%の利下げを決定し、レポレートを8.00%としました。
前日に発表された8月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年比+4.4%まで低下(3年ぶり低水準)し、インフレが目標レンジ中央に近づいたことが利下げを後押ししました。
続いて11月21日のMPCでも0.25%の追加利下げを行い、政策金利は7.75%となりました。
この決定はエコノミスト予想通りで、これによりSARBは2024年下期にかけて2会合連続での利下げ実施となりました。
金融政策の方針・声明の要点: SARBのレセチャ・クガニャゴ総裁は、利下げに踏み切った背景としてインフレ率の大幅低下を挙げています。
実際、2024年10月のCPI上昇率は前年比+2.8%と4年以上ぶりの低水準となり、当局の目標レンジ(3~6%)を下回りました。
総裁は9月利下げ後の声明で「直近のインフレ率低下は顕著であり、この水準が持続すれば予測最終年の2026年までインフレ率は目標中央値4.5%を下回る」と述べ、インフレ見通しの改善に言及しました。
加えて「通貨ランド高、原材料価格の低下、食品価格見通しの改善」が物価安定に寄与していると分析し、中期的には金融緩和スタンスを維持して「来年に向け金利は中立水準(7%強)へ向かい安定するだろう」との見通しを示しています。
これは金融政策の方針転換を示唆するもので、高インフレに対応した引き締め姿勢から、景気に配慮した緩和的姿勢へ移行しつつあることが読み取れます。
もっとも、総裁は声明で繰り返し慎重な姿勢も強調しました。
11月の利下げ時には「引き締め水準の引き下げはインフレ目標の達成と整合的だが、リスク見通しを踏まえると慎重なアプローチが必要」と述べています。
具体的なリスク要因として、「世界的に金利が再び上昇する可能性」や「最近のランド安は世界環境の変化が南アに速やかに波及することを示している」点に言及し、海外発のインフレ圧力や為替変動への警戒感を示しました。
また、「外部環境の不透明さ(地政学リスクの高まり等)に鑑みれば、南ア国内でも金融引き締めが再度必要となる可能性は否定できない」と指摘し、利下げ局面入り後も状況次第では柔軟に対応する姿勢を崩していません。
こうした発言から、SARBはデータ次第で利下げ停止や利上げ再開も辞さない慎重な金融政策運営を行っており、インフレ目標の堅持と金融安定に強くコミットしていることが窺えます。
3. 実質金利・短期金利・長期金利の推移とインフレ率との関係
インフレ率の推移: 2024年の南アフリカのインフレ率は大きく低下しました。
前年まで7%を超える局面もあった消費者物価上昇率は、2024年1月時点で5.3%とまだ目標レンジ上限寄りでしたが、その後ディスインフレが進行。
4月にはコアインフレ率が4.6%と目標中央値(4.5%)にほぼ到達し、8月にはCPI総合で4.4%、そして10月には2.8%と目標下限を下回る水準にまで低下しました。
食料やエネルギー価格の落ち着き、南アランド高による輸入品価格の抑制効果などが背景にあり、インフレ率は年初から年末にかけ約半分に鈍化したことになります。
名目金利と実質金利: 上記のインフレ低下に対し、政策金利の引き下げ幅は限定的だったため、実質金利(名目金利-インフレ率)は大きく上昇しました。
年初時点では政策金利8.25%、インフレ率5~6%程度で、実質金利はおおよそ+2~3%に過ぎませんでした。
しかし年末時点では政策金利7.75%に対しインフレ率が3%未満となり、実質金利は+4~5%程度まで上昇しています。
つまり、投資家にとっての実質利回りが大幅に向上した一年でした。
この実質金利の上昇は、南ア国債や通貨の投資妙味を高める方向に作用し、ランドが下支えされる一因ともなりました (総裁もインフレ低下とランド高が相まって金融緩和余地が生じたと述べています)。
短期金利: 南アの短期金利(例:3ヶ月物JIBARや短期国債利回り)は、基本的に政策金利に連動して推移します。
2024年前半は政策金利据え置きに伴い短期金利も高位安定していましたが、9月以降の利下げを受け徐々に低下に転じました。
もっとも年末時点でも7%台後半と、過去数年と比較すれば依然高水準にあります。
高い短期金利水準は円などとの金利差(スワップ金利)となって表れ、日本の個人投資家にとってはランド/円投資で毎日スワップ収入を得られる魅力につながりました。
一方で、この高金利環境は南ア国内では借入コストの高さを意味し、2024年通年の国内景気は低迷(例えば2024年Q1成長率は前期比-0.1%、Q2は+0.4%と停滞)していました。
高金利・低成長という状況下で、SARBは上述の通り慎重ながらも利下げに転じ、少しずつ金融環境を緩和方向へ導いた形です。
長期金利とインフレの関係: 南アフリカ10年物国債利回りは、2024年を通じて低下基調が見られました。
年初には10年債利回りがおよそ10~11%台とインフレ懸念を織り込んだ水準でしたが、インフレ率の急低下や政策転換観測を背景に債券相場が上昇(利回り低下)しました。
特に9月末には10年利回りが8.8%前後まで低下し、ここ数年で最も低い水準を付けています。
これは南ア国債の実質利回りが非常に魅力的になったことを示唆しており、インフレ沈静化により長期金利市場でも楽観が広がった格好です。
また、世界的にも2024年後半は米欧で利上げ停止観測が強まり、新興国債券への資金流入が追い風となった側面もあります。
しかし年末にかけて長期金利はやや反発しました。
総選挙後の政治的不透明感や、2025年度予算編成を巡る財政懸念が意識され、投資家が南ア国債に求めるプレミアムが再び上昇したためと考えられます。
実際、2025年4月初めには10年利回りが再び11%台前半まで急上昇する局面もあり、南ア国債利回りのボラティリティ高さを示しました。
最終的に2024年末時点では10年利回りはおおむね9~10%前後に位置し、前年末と比べ若干低下した程度となりました。
年間を通じて見ると、インフレ率急低下によって前半は長期金利が顕著に低下し(債券価格上昇)、後半は政治・財政リスクで幾分上昇に転じたという展開です。
4. 南ア10年国債利回りと利回りカーブの動向
10年国債利回り: 上述の通り、10年物国債利回りは2024年前半から秋口にかけて低下基調を辿り、一時9%を下回る水準まで低下しました。
これは南ア債券市場において約3年ぶりの低水準であり、SARBの利上げサイクル終了やインフレ沈静化を織り込んだ動きでした。
「2025年度予算案の成立見通し」や「低インフレの定着」といった好材料も長期金利の低下(債券買い)につながったと報じられています。
実際、2024年9月時点ではSARBが中立金利水準への利下げ継続を示唆したこともあり、将来のインフレ期待が大きく低下しました。
その結果、名目長期金利からインフレ期待を差し引いた実質長期金利は高まり、南ア国債への海外マネー流入も誘発されたと考えられます。
しかし年末にかけては長期金利が再上昇し、利回り低下分の一部を巻き戻しました。
これは主に利回りスプレッド拡大要求(リスクプレミアムの上昇)によるものです。
総選挙の結果与党が大幅議席を減らしたことで、急進左派政党との連立や政策不透明感が台頭し、政治リスクプレミアムが上乗せされました。
また、歳出拡大による財政悪化懸念や、米国債利回りの上昇(2024年後半に米長期金利が一時的に上昇した局面)も、新興国である南アの長期債を圧迫しました。
その結果、2024年末時点で10年利回りは約10%前後に戻り、年間では小幅低下に留まりました。
イールドカーブの傾向: 南アフリカの利回り曲線(イールドカーブ)は、2024年を通じてフラット化する方向に動きました。
年初時点では政策金利8.25%に対し10年債利回りは10%台半ばと長短金利差が大きく正スプレッドの状態(順イールド)でした。
しかしインフレ鈍化により長期側が低下した一方、短期側(金利先高観から政策金利が高止まり)はすぐには下がらなかったため、年央には長短金利差が急縮小しました。
実質的にフラットないし軽度の逆イールドに近い局面もあり、将来の利下げ観測が強まったことを物語っています。
秋以降はSARBの利下げ開始で短期金利が少しずつ低下する一方、逆に長期金利が反発上昇したため、イールドカーブは再び若干スティープ化しました。
それでも、年末時点でも短期(金利)≒長期(金利)に近い緩やかな順イールドに留まっています。
例えば2024年末時点で政策金利7.75%に対し10年債利回りは約10%と、その差は+2~3%程度です。
これは前年までの+4~5%近い長短金利差に比べ縮小しており、南アの金利構造がよりフラットになったことを示します。
背景にはインフレ率の低下で将来金利が大きく下がると市場が見ていたこと、そして南ア国債の格下げリスクなどで超長期ゾーンの発行が抑制されたこともあるでしょう。
総じて2024年は前半にかけて顕著なイールドカーブのフラット化が進み、後半はやや順イールドに戻ったものの過去と比べれば平坦なカーブとなった年でした。
5. ランド関連の通貨ETFのパフォーマンスと金利・為替との相関
南アフリカの市場に連動する代表的なETFとしてiShares MSCI South Africa ETF(ティッカー: EZA)があります。
同ETFは南アフリカの大中型株で構成される株価指数に連動し、米ドル建てで取引されています。
2024年におけるEZAのパフォーマンスは非常に良好で、年初来で二桁台後半(約30%前後)の上昇となりました。
特に年央から年末にかけて南ア株式市場が力強く上昇したことで、同ETFも52週安値の39.55ドルから52週高値54.56ドルまで大きく値上がりしています。
また、EZAは高配当利回りのETFでもあり、2024年は分配金利回り約7.3%を投資家に提供しました。
この配当と値上がり益を合わせたトータルリターンは30%超と、米国株式を上回る水準となっています。
ランド金利・為替との相関: EZAのパフォーマンスには、南アフリカランドの為替レートや南ア金利動向が複合的に影響します。
まず為替について、EZAは米ドル建てETFのためランド高・ドル安になれば基準価額(NAV)が押し上げられ、逆にランド安・ドル高になれば下押し圧力となります。
2024年はランドが対ドルで年間を通じ約3%下落(ドル高・ランド安)しました が、この為替逆風をものともせずにEZAは大幅な上昇となりました。
これは南アフリカ株式自体の上昇が為替要因を上回る寄与をしたためです。
インフレ鎮静化を背景に南ア準備銀行が利下げを開始し、将来の景気回復期待から南ア株式市場(JSE)が活況を呈したことがETF価格を押し上げました。
特にEZAの組入上位には金融株や資源株が多く含まれます。
前者の銀行株などは高金利環境で利ざや拡大期待、後者の金鉱株などは金価格上昇による恩恵を受け、2024年を通じて株価が上昇しました。
この株高効果がランド安要因を打ち消し、結果としてドル建てのEZAも大幅な上昇を遂げたのです。
金利との関係では、南アの高金利そのものがEZAの魅力を高める要因となりました。
金利が高水準にある間、銀行・保険など金融セクターの利息収入増加や、高配当株の利回り確保が期待できるため株式市場に資金流入が起こりやすくなります。
またEZAの分配金利回りも南ア企業の配当を反映しており、南アの政策金利や債券利回りが高いほど相対的に魅力的な配当利回りが確保される傾向があります。
さらに、南ア金利が低下局面に転じると株式のバリュエーション改善(将来利益の現在価値上昇)につながり、これも株価押し上げ要因となります。
2024年後半の利下げ開始はまさにその効果をもたらしました。
一方で金利低下は通常ランド安要因でもありますが、先述の通りインフレ低下で実質金利が依然高水準だったことや、緩和開始による景気期待がランド安をある程度相殺しました。
結果としてランド金利・為替とEZAの関係は正の相関が維持され、金利環境が良化しランドも安定する中でETFが上昇したと言えます。
もっとも、長期的に見ればランドが大幅に下落すればドル建てETFにはマイナスとなるため、為替ヘッジなしで南ア資産に投資する場合は為替リスクも常に考慮が必要です。
南アフリカランド投資のリスク要因と魅力の変動
2024年を通じて、南アフリカランド投資を取り巻くリスクと魅力(リターン要因)は大きく変化しました。
以下に主なポイントを整理します。
- 政治・政策リスク: 2024年前半の最大イベントは総選挙でした。
選挙前は政局不安からランドに下押し圧力がかかる局面もありましたが、結果として与党ANCが過半数割れとなり30年ぶりの政権再編成期を迎えました。
当初ランドは下落で反応したものの、その後は穏健派との連立模索や国民統一政府構想が浮上したことで、最悪のシナリオ(急進政党の影響力拡大)は回避されるとの見方も出ています。
とはいえ政治不透明感は依然残存し、将来的な政策(財政拡張や国営企業改革など)次第ではランド市場に影響を与え得るため、この政治リスクは2024年を境に一段高まった側面があります。 - 経済・信用リスク: 南アフリカ経済の構造的課題もランド投資のリスク要因です。
電力不足・計画停電(ロードシェディング)の深刻化は製造業や日常生活に打撃を与え、投資家心理を冷やしてきました。
2024年は政府が電力公社エスコムの立て直しに取り組み、一部発電設備の改修進展も報じられましたが、依然として恒常的な電力不足リスクは南ア経済の重石です。
また高失業率・治安問題などの構造課題も解決には時間を要し、これらは海外投資家が南アに慎重姿勢を取る要因となり得ます。
さらに財政赤字・政府債務の拡大も無視できません。
2024年後半、一部格付機関は南ア財政見通しに懸念を示し始めており、歳出拡大が進めば国債格下げのリスクもあります。
国債利回りが秋以降上昇に転じたのは、この信用リスクの台頭も背景にあります。 - 国際要因・市場流動性: ランドは新興国通貨ゆえに、グローバルな市場心理の変化に敏感です。
2024年は概ね世界的に株高・ドル高基調で推移し、新興国から資金が大きく流出する事態は避けられました。
しかし米国の金融政策や地政学リスク次第ではリスクオフの波が新興国を襲い、ランドが急落する可能性もあります(実際、過去には米利上げ局面でランドが急落した例があります)。
2024年は米連邦準備理事会(FRB)が利上げ停止→年末にかけ利下げ観測という流れだったため、むしろランドに追い風でしたが、このグローバル金利環境の変化は今後もランド相場に影響し続けるでしょう。
またランド市場自体の流動性は主要通貨ほど高くないため、国際投資家の動きが集中すると値動きが増幅される点もリスクとして認識すべきです。
一方、南アフリカランド投資には高い投資妙味(魅力)も引き続き存在します。
- 高金利・高スワップの魅力: 何と言っても南アランドは世界有数の高金利通貨です。
2024年末時点でも政策金利7.75%、10年国債利回り約10%と、主要先進国では得られない利回り水準を提供しています。
特にゼロ金利に近い円で調達した資金をランドで運用すれば、為替変動がなかった場合でも年利で7~8%ものスワップ(金利差収入)を得ることが可能です。
このキャリートレード妙味は2024年も健在で、多くの国内投資家がランド債やランド建て資産に注目した要因です。
また実質金利が上昇したことで、インフレに目減りされない真水の利回りが確保できる点も魅力を増しました。 - インフレ低下と通貨価値安定: 上記の通り2024年に南アフリカのインフレ率は大きく低下し、中銀のインフレターゲット範囲内に収まりました。
これは通貨ランドの購買力が安定したことを意味し、長期投資の観点では心強い材料です。
高金利通貨でもインフレが高ければ実質リターンは相殺されますが、南アはインフレを4%前後に収めつつ名目金利は7~10%を享受できており、投資妙味が際立っています。
SARBは中期的にもインフレ目標を堅持すると表明しており、信認ある金融政策はランドの価値維持に寄与しています。 - 分散投資と資源国メリット: ランドや南アフリカ資産は、グローバルポートフォリオの中で分散投資先としても有用です。
他の資産と相関が必ずしも高くないため、一部組み入れることで全体のリスク調整後リターンを高める可能性があります。
特に資源価格や中国景気動向に連動しやすいランドは、米欧中心の資産とは異なる値動きをすることもあります。
また南ア株式・債券市場は新興国の中では規模・流動性とも比較的大きく、海外投資資金の受け入れ体制が整っています。
2024年にはMSCI新興国指数に占める南ア市場の比重が見直されるなど、国際的な投資マネーの流入も見られました。
こうした点もランド資産の投資魅力を下支えしています。
総括すると、2024年の南アフリカランド投資環境は、インフレ抑制の成功とそれに伴う金融緩和への転換によって従来より安定感とリターン魅力が増した一方、政局や財政といった新たな不確実性も顕在化した年でした。
ランド投資のリスク要因と魅力は表裏一体であり、高金利という魅力の裏に為替ボラティリティや政治経済リスクが存在します。
投資家としては、高スワップ収入や高利回り債券による魅力を享受しつつ、リスク分散や市場動向の注視を怠らないことが重要です。
2024年の経験から得られた教訓は、「高金利の魅力は健在だが、油断せずリスク管理を徹底すること」に尽きるでしょう。
(表)2024年における主要指標の推移: 南アフリカランド相場と金利・経済指標の年間動きを以下の表にまとめます。
指標 | 2024年初 | 2024年中頃 | 2024年末 |
---|---|---|---|
南アフリカランド/円 (ZAR/JPY) | 約7.7円(1月初旬) | 8.92円(7月10日最高値) ※5月末一時8.0円割れあり | 約8.5円(12月末) |
政策金利(レポレート) | 8.25% | 8.25%(据え置き) | 7.75%(11月利下げ後) |
消費者物価上昇率(CPI, YoY) | 5.3% | 4.4%(2024年8月) | 2.8%(2024年10月) |
10年国債利回り(南アフリカ) | 約10.5%前後 | 8.8%(2024年9月末) | 約10.0%前後 |
米ドル/南アランド (USD/ZAR)レート | 約17.0(1月) | 19.3(2月末ランド安値) | 約17.5(12月) |
iShares 南アフリカETF (EZA)価格 | $40前後(推定) | $39.5(6月下旬安値) | $48前後(12月) |
注:USD/ZARは1ドルあたりランド。
ランド高/安は円やドルに対する値動きで評価。
上記より、ランドは対円で年初比+8%、対ドルで年初比-3%程度となった。
またEZAの2024年トータルリターンは配当込みで約+30%となっている。
以上のように、2024年の南アフリカランド投資環境は為替・金利・資産価格の多方面で大きな変化が見られました。
高金利通貨ランドの魅力が再認識される一方で、新興国特有のリスクも浮き彫りになった一年と言えます。
今後も南アフリカランドへの投資に際しては、こうした要因の変化に注目しつつ、リスクとリターンのバランスを見極めていくことが重要となるでしょう。
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