学習曲線と経験曲線効果と計算方法についてわかりやすく解説

学習曲線と経験曲線効果は、生産や作業の効率が経験や繰り返しによって向上する現象を数学的にモデル化したものです。この現象は、特に製造業において重要な意味を持ち、コスト削減や生産性向上の戦略を立てる上で役立ちます。

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学習曲線と経験曲線効果と計算方法についてわかりやすく解説

学習曲線(Learning Curve)と経験曲線(Experience Curve)の概念は、実際の製造と運用の現場での観察とデータ分析を通じて発展してきました。これらの概念は、主に20世紀初頭に確立され、経営学や製造業の分野で広く受け入れられています。

学習曲線と経験曲線を区別する文献もありますが、この記事では区別しないで扱います。

学習曲線とは生産個数を引数とし、単位生産あたりのコストを返す関数のグラフのことです。

さて、生産コストに関する一般的なモデルは対数線形モデルを用いて表されます。このモデルでは、\(n\)個の製品を生産したときの単位あたりのコストを次のように表します。

\begin{align*} c(n) = an^b \end{align*}

ここで、\(c(1) = a\) であることから、\(a\)は最初の1個を生産した時のコストとして解釈することができます。
また、\(b\)は学習効果を表すパラメータで、通常は負の値をとります。

もし\(b\)が正の値をとるようなモデルでは、生産数が多ければ多いほど単位あたりの製造コストが大きいという状況を表現するモデルとなってしまいます。勿論、状況によってはこのようなモデルが採用されることもありますが、標準的にはたくさんつくればつくるほど単位当たりのコストは小さくなっていくと考えられるので、\(b\)は負の値をとると考えます。

また、このモデルが対数線形モデルとよばれる理由は、両辺の対数をとると
\begin{align*} \log c(n) = \log a + b \log n\end{align*}
のように線形モデルとなるからです。

生産量を2倍にしたとき

生産量を2倍にしたときに、単位あたりのコストがどう変化するかをみてみましょう。
\begin{align*} c(2n) = 2^b an^b\end{align*}
であるので、コストは\(n\)によらず\(2^b\)倍になります。

学習率(習熟率)の定義と計算方法

学習率あるいは習熟率は以下のように定義されます。

定義: 学習率

\begin{align*} \frac{c(2n)}{c(n)}\end{align*}

を学習率あるいは習熟率という。

学習率は、生産量の増加に伴うコスト削減の度合いを示す指標で、生産量が倍増するごとにコストがどの程度減少するかを表す比率です。

先ほどの計算結果から、
\begin{align*} \frac{c(2n)}{c(n)} = 2^b \end{align*}
であるので、学習率は\(2^b\)として計算することができます。

学習率が\(X\)パーセントの学習曲線のことを\(X\)パーセント学習曲線といいます。

進捗率

定義: 学習率

\begin{align*} 1 – \frac{c(2n)}{c(n)}\end{align*}

を進捗率という。

進捗率は、生産量が倍増した際のコスト削減率をさらに分かりやすくした指標で、学習率を1から引いたものです。

学習曲線と経験曲線の概念は、特に製造業を中心に発展し、経営戦略や効率化のアプローチに深い洞察を提供しました。これらは、生産性向上、コスト削減、競争優位の確立など、ビジネスの多くの面で重要な役割を果たしています。

具体的な計算例

問題

A社がタブレット型携帯端末の試作器を生産したところ,1台目の生産には10時間かかり,2台目を生産するのには6時間かかりました.このことから,A社がタブレット型携帯端末を生産した場合の学習曲線(経験曲線)は何%曲線だと考えられるでしょうか.

学習率は
\begin{align*} \frac{c(2n)}{c(n)}\end{align*}
によって定義されるのですが、この問題においては単位あたりの生産コストのモデルが完全に与えられているわけではないので、
\begin{align*} \frac{c(2)}{c(1)}\end{align*}
を学習率の推定値とすることにしましょう。

生産にかかる時間をコストだとしてとらえ、単位あたりの生産コストを
\begin{align*} c(n) = a n ^b\end{align*}
としてモデル化します。1台目の生産には10時間かかったので、
\begin{align*} c(1) = 10 \end{align*}
ですので、\(a = 10\)です。

2台生産したとき、合計で\(10 + 6\)時間かかりましたので、1台あたりの生産にかかった時間は
\begin{align*} \frac{6 + 10}{2 } = 8\end{align*}
であることがわかります。
したがって、
\begin{align*}c(2) = 8 \end{align*}
です。

つまり学習率はおよそ
\begin{align*} \frac{c(2)}{c(1)} = \frac{8}{10} = 0.8 \end{align*}
と推定されることがわかります。

これをパーセントで表現したい場合は\(80\)パーセントとなります。

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