選好の単調性と凸性をわかりやすく解説!!

選好の単調性と凸性は、経済学における消費者の選好に関する概念の一つです。ここでの「選好」とは、消費者がある消費計画を他の消費計画よりも好むかどうか、またはその逆かを示すものを指します。

目次

選好の単調性と凸性をわかりやすく解説!!

全部で\(n\)種類の財やサービスが存在する状況を考えます。

消費計画とは、複数の異なる財やサービスの組み合わせを表すもので。例えば、財1を2単位、財2を3単位持っている場合消費計画は\((2, 3)\)と表現されます。

実現可能な消費計画全体を消費可能集合といいます。数学的なモノとしては消費計画は\(n\)次元ユークリッド空間のベクトルであり、消費可能集合は\(n\)次元ユークリッド空間の部分集合です。

次に、消費可能集合に自然に備わる順序構造を確認しておきましょう。

定義: 消費可能集合の順序

\(\mathbb R^n\)をユークリッド空間とし、\(X\subset \mathbb R^n\) を消費可能集合とします。
\(x = (x_1, \ldots, x_n), y = (y_1, \ldots, y_n) \in X\)に対して
\begin{align*} x \leq y \Leftrightarrow x_1 \leq y_1, x_2 \leq y_2, \ldots ,x_n \leq y_n \end{align*}
と定めます。これを、消費可能集合に定まる自然な順序といいます。

選好の単調性とは?

それでは選好の単調性を定義しましょう。
消費可能集合を\(X\subset \mathbb R^n\)で表すことにします。
そして、選好を\(\precsim\)で表すことにします。
例えば、消費計画\(x\)よりも\(y\)の方がよい(あるいは同じ)ときには、
\begin{align*} x \precsim y \end{align*}
と書くことにします。

定義: 選好の単調性

選好が単調性をもつとは、任意の消費計画\(x, y \in X\)に対して、
\begin{align*} x \leq y \Rightarrow x \precsim y\end{align*}
が成り立つことをいいます。

消費計画の自然な順序構造は
\begin{align*} x \leq y \Leftrightarrow x_1 \leq y_1, x_2 \leq y_2, \ldots ,x_n \leq y_n \end{align*}
であったことを思い出しておくと、これは全ての財に対して消費が多ければ、より好ましいという性質であると解釈できます。

具体例:選好が単調性を満たすかどうかをチェックしてみよう

設定

財が2種類である状況を考えましょう。つまり消費計画が\(\mathbb R^2\)のベクトルとして表される状況です。
選好を以下によって定めます。
\begin{align*} x \precsim y \Leftrightarrow x_1^2 + x_2^2 \leq y_1^2 + y_2^2 \end{align*}
このとき、この選好は単調性をもつ

ここで\(x_1^2 + x_2^2 \leq y_1^2 + y_2^2\)は実数としての大小関係を表しており、消費計画の自然な順序構造とは無関係です。

さて、実際に単調性をもつことを証明しましょう。
まず適当に消費計画\(x, y\in X\) で\(x \leq y\)を満たすものをとってみましょう。
すると、
\begin{align*} x \leq y \Leftrightarrow x_1 \leq y_1, x_2 \leq y_2\end{align*}
であったので、
\begin{align*} x \leq y \Rightarrow x_1^2 \leq y_1^2, x_2^2 \leq y_2^2\end{align*}
が成り立ちます。これはつまり、
\begin{align*} x \leq y \Rightarrow x_1^2 + x_2^2 \leq y_1^2 + y_2^2\end{align*}
が成り立つことを意味しています。

したがって、単調性をもつことが確かめられました。

選好の凸性とは?

次に選好の凸性について考えていきましょう。

定義: 選好の凸性

選好が凸性をもつとは、任意の消費計画\(x \in X\)に対して、
\begin{align*} X(x) = \{y \in X \mid x \precsim y \} \end{align*}
凸集合であることを言います。

ここで、凸集合とは何であったかを思い出しておきましょう。

定義: 凸集合

ユークリッド空間\(\mathbb R^n\)の部分集合\(A \subset \mathbb R^n\)は
\begin{align*} x, y \in A, 0 \leq t \leq 1 \Rightarrow tx + (1-t)y \in A \end{align*}
が成り立つときに凸集合といいます。

\(tx + (1-t)y \)は一般的に\(x, y\)の凸結合といいます。
つまり、凸集合とは、どんな二つの要素のどんな凸結合も、またその集合の要素であるような集合のことです。

ということは、選好が凸性をもつということは、次のように言い換えることができます。

定義: 選好の凸性(同値な言い換え)

選好が凸性をもつとは、任意の消費計画\(x \in X\)に対して、
\begin{align*} x \precsim y, y^\prime , 0 \leq t \leq 1 \Rightarrow x \precsim t y + (1 – t)y^\prime \end{align*}
が成り立つことを言います。

選好の凸性とは、どんな消費計画についても、その消費計画より好ましい消費計画を適当に2つ選んできた時に、それらを適当な割合でミックスした消費計画も、好ましい消費計画であるという性質です。

具体例:選好が凸性を満たすかどうかをチェックしてみよう

それでは実際に選好が凸性をもつかどうかをチェックする問題を考えてみましょう。

設定

財が2種類である状況を考えましょう。つまり消費計画が\(\mathbb R^2\)のベクトルとして表される状況です。
選好を以下によって定めます。
\begin{align*} x \precsim y \Leftrightarrow x_1^2 + x_2^2 \leq y_1^2 + y_2^2 \end{align*}
このとき、この選好は凸性をもたない

確かめてみましょう。

例えば、\((\frac{1}{\sqrt{2}} , \frac{1}{\sqrt{2}}) , (1, 0), (0, 1) \in X\) をとります。
\begin{align*} \left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 + \left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 \leq 1^ 2 + 0 ^2 \\ \left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 + \left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 \leq 0^ 2 + 1 ^2 \end{align*}
であるので、
\begin{align*} (\frac{1}{\sqrt{2}} , \frac{1}{\sqrt{2}}) \precsim (1, 0), (0, 1) \end{align*}
であるものの、\( (1, 0), (0, 1) \)の凸結合である\(\frac{1}{2} (1, 0) + (1 – \frac{1}{2}) (0, 1) = (\frac{1}{2}, \frac{1}{2})\) を考えると、
\begin{align*}\left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 + \left(\frac{1}{\sqrt{2}} \right)^ 2 > \left( \frac{1}{2} \right) ^ 2 + \left( \frac{1}{2} \right) ^ 2\end{align*}
であるので、\( (\frac{1}{\sqrt{2}} , \frac{1}{\sqrt{2}}) \precsim \frac{1}{2} (1, 0) + (1 – \frac{1}{2}) (0, 1)\)が成り立ちません。したがって、凸性が成り立ちません。

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