レバレッジ型ETFには「逓減(decay)」と呼ばれる現象があります。ざっくり言うと、原指数が上がったり下がったりして元の水準に戻ったのに、レバレッジ型ETFは元の価格に戻らない、という現象です。この記事では「なぜそうなるのか」を100→110→100の例と数式で確かめます。

📌 先に結論

2倍型が目指すのは、原指数の「日々の変動率」の2倍です。2日以上のトータルリターンが必ず2倍になる商品ではありません。日々の騰落率を掛け合わせるため、値動きの順番と大きさが結果に影響します。

レバレッジ型ETFがなぜ逓減するかを数学的にわかりやすく解説

レバレッジ型ETF(Exchange Traded Fund、上場投資信託)は、原指数の日々の変動率に一定の倍数を掛けた値動きを目指す商品です。2倍型なら、原指数が前日比1%上昇した日に、前日比2%の上昇を目指します。

原指数が上昇する局面では大きなリターンを狙える一方、下落時の損失も大きくなります。また、原指数と反対方向の日次リターンを目指すインバース型もあります。ここ、名前以上に仕組みが少しややこしいところです。

レバレッジによる逓減とは? 📉

逓減は、文章だけより数字で見たほうが早いです。原指数を100からスタートさせ、初日に10%上昇し、翌日に100へ戻るケースを考えます。

ある金融商品の価格推移

初日に\(1.1\)倍(100→110)になり、翌日に\(\frac{1}{1.1}\)倍(110→100)になった。

このとき、2日間の変化は
\begin{align*} 1.1 \times \frac{1}{1.1} = 1 \end{align*}
です。原指数はぴったり元の水準に戻ります。

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一方、2倍型ETFは初日の+10%に対して+20%を目指すので、100→120となります。翌日の原指数の下落率は-10%ではなく、
\begin{align*} \frac{100}{110}-1 = -\frac{1}{11} \approx -9.09\% \end{align*}
です。ということは、2倍型ETFの翌日の目標は約-18.18%です。

2日間の結果は、
\begin{align*} 1.2\left(1-2\left(1-\frac{1}{1.1}\right)\right) &= 1.2\times\frac{9}{11} \\ &= \frac{54}{55} \\ &\approx 0.9818 \end{align*}
となります。

時点原指数2倍型ETF
スタート100100
1日目110(+10%)120(+20%)
2日目100(約-9.09%)約98.18(約-18.18%)
原指数は100に戻っても、2倍型ETFは約98.18になる
逓減の正体 💡

原指数は100に戻ったのに、2倍型ETFは約1.82%下落しました。これは「上下した値動きを、毎日異なる価格に対して掛け算した」結果です。

レバレッジによる逓減を数学的に解説 🔍

なぜこのようなことが起きるのか、一般式でも確認します。初日の原指数の収益率を\(a\)とします。価格が正であるために\(a>-1\)とし、2倍型ETFの両日の価格倍率も正に保つ例として\(-\frac{1}{2}<a<1\)の範囲を考えます。

ある金融商品の価格推移

初日に\(1+a\)倍に変化し、翌日に\(1-\frac{a}{1+a}\)倍に変化する。

この原指数は2日間で、
\begin{align*} (1+a)\left(1-\frac{a}{1+a}\right)=1 \end{align*}
倍となり、元の価格に戻ります。

では、この金融商品の価格に連動したレバレッジ2倍のETFの価格推移はどうなるでしょうか。
以下のようになります。

2倍レバレッジ型ETFの価格推移

初日に\(1+2a\)倍に変化し、翌日に\(1-\frac{2a}{1+a}\)倍に変化する。

したがって、2倍型ETFの2日間の価格倍率は、
\begin{align*} (1+2a)\left(1-\frac{2a}{1+a}\right) &= (1+2a)\left(\frac{1-a}{1+a}\right) \\ &= \frac{1+a-2a^2}{1+a} \\ &= 1-\frac{2a^2}{1+a} \end{align*}
となります。

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\(a>-1\)なら分母は正なので、
\begin{align*} \frac{2a^2}{1+a}\geq 0 \end{align*}
です。\(a=0\)のときだけ0となり、\(a\neq0\)なら、
\begin{align*}1-\frac{2a^2}{1+a}<1\end{align*}
となります。この式の\(a^2\)がポイントで、最初に上がっても下がっても、往復する値動きの大きさが逓減分として残ります。

2倍に限らず、\(L\)倍(\(L>1\))なら、各日の価格倍率が正となる範囲で同じように、
\begin{align*} (1+La)\left(1-\frac{La}{1+a}\right) =1-\frac{L(L-1)a^2}{1+a} \end{align*}
となります。レバレッジ倍率が大きいほど、上下を繰り返す局面でこの差も大きくなることが見てとれます。

「長く持つと必ず下がる」わけではない ⚠️

逓減は、保有日数が増えれば必ず価格が下がる、という意味ではありません。上下を繰り返す相場ではマイナスの複利効果が表れやすい一方、同じ方向への値動きが続くと、複利効果がプラスに働く場合もあります。

例えば、原指数が2日連続で+10%ずつ上昇すると、100→121でトータル+21%です。2倍型が毎日+20%で動けば100→144となり、トータルは+44%です。この場合は21%の単純な2倍である42%より大きくなります。つまり、大事なのは「長く持ったか」だけではなく、どのような値動きをたどったかです。

実際のETFとの違い

ここまでは「毎日ちょうど2倍に動く」と仮定し、信託報酬、売買コスト、資金調達コスト、連動誤差などは考慮していません。実際の商品では、目論見書や管理会社の資料も確認が必要です。

総じて、レバレッジ型ETFは原指数より大きなリターンを目指せる一方、損失も大きく、上下を繰り返す局面では逓減しやすい商品です。「2倍型だから、半年後の騰落率も単純に2倍」とは限りません。商品を見るときは、倍率だけでなく日次目標であることと、保有中の値動きの経路を意識するのが大切です。

参考:日本取引所グループ「レバレッジ型指標」
本記事は仕組みの一般的な説明を目的としており、特定の金融商品の売買を勧めるものではありません。

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