【線形代数】次元定理の証明と準同型定理の証明

本記事では、次元定理についての証明を紹介します。次元定理は数学の重要な定理の一つであり、線型写像の核と像の次元の関係を示しています。

目次

次元定理

次元定理を証明する前に、まず準同型定理を確認しましょう。

準同型定理

\(V\)と\(W\)をそれぞれ\(n\)次元および\(m\)次元のベクトル空間とし、\(f: V \rightarrow W\)を線型写像とします。

このとき、

\begin{align*} V / \text{Ker}(f) \simeq \text{Im}(f) \end{align*}

が成り立ちます。

証明をしていきます。

\(V / \text{Ker}(f)\)から\(\text{Im}(f)\)への線型写像\(\tilde{f}\)を次のように定義します。

\begin{align*} \tilde{f}([v]) = f(v). \end{align*}

ここで、\([v]\)は\(v\)が属する\(\text{Ker}(f)\)の同値類を表します。

まず、\(\tilde{f}\)が全射であることを確認します。任意の\(w \in \text{Im}(f)\)に対して、ある\(v \in V\)が存在して\(f(v) = w\)です。このとき、\(\tilde{f}([v]) = f(v) = w\)となるため、\(\tilde{f}\)は全射です。

次に、\(\tilde{f}\)が単射であることを示します。もし\(\tilde{f}([v]) = 0\)ならば、\(f(v) = 0\)となります。したがって、\(v\)は$\text{Ker}(f)$に属し、\([v] = [0]\)となります。従って、単射です。

\(\tilde{f}\)は全単射な線型写像なので、同型写像です。従って、

\begin{align*} \dim(V / \text{Ker}(f)) = \dim(\text{Im}(f)). \end{align*}

です。

次元定理

それでは次元定理の証明にとりかかります。

次元定理の主張は以下の通りです。

\(V\)と\(W\)をそれぞれ\(n\)次元および\(m\)次元のベクトル空間とし、\(f: V \rightarrow W\)を線型写像とします。このとき、

\begin{align*} \dim \text{Ker}(f) + \dim \text{Im}(f) = n \left( = \dim V \right) \end{align*}

が成り立ちます。

前述の準同型定理を用いて、次元定理を証明します。

証明:商ベクトル空間の次元に関する性質から、

\begin{align*} \dim(V / \text{Ker}(f)) = \dim(V) – \dim(\text{Ker}(f)). \end{align*}

です。

前に示した準同型定理より、

\begin{align*} \dim(V / \text{Ker}(f)) = \dim(\text{Im}(f)). \end{align*}

これらを組み合わせると、次の式が得られます。

\begin{align*} \dim(V) – \dim(\text{Ker}(f)) = \dim(\text{Im}(f)). \end{align*} これを変形すると、次元定理が示されます。 \begin{align*} \dim(V) = \dim(\text{Ker}(f)) + \dim(\text{Im}(f)). \end{align*}

これにより、次元定理の証明が完了します。

おまけ:行列の次元定理

行列は線型写像なので、以下の命題が成り立ちます。

\(A: \mathbb R^n \rightarrow \mathbb R^m\)を\(m \times n\) 行列とします。このとき、

\begin{align*} \dim \text{Ker}(A) + \text{rank}(A) = n \end{align*}

が成り立ちます。

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