Farkasの補題を証明します。これは線形計画問題や最適化問題で重要な補題で、凸解析の分離定理を用いて証明します。連立方程式の解の存在と、連立不等式の解の存在のあいだの関係に示唆を与える補題でもあります。
Farkasの補題の証明をわかりやすく解説
Farkasの補題を証明するために、有限次元の凸解析における基本的な命題を復習しておきましょう。
コーシー列・収束列・下限・凸集合・閉包などの実数論あるいは集合位相の標準的な内容を分かっていれば理解することができます。
予備知識1:有限次元射影定理
を満たすものが存在して、一意である。つまり、
はユニークなミニマイザーをもつ。
証明:
を満たすものがとれる。
であることから、
である。
中線定理
を思い出すと、
であるので、極限をとると
となるのでコーシー列である。
従って、
一意性を示しておく。もし異なるミニマイザーが存在すると、
となり、
となってしまい、
補足:原点
任意の
を満たすものが存在して、一意である。
予備知識2:有限次元の分離超平面定理の一種
分離超平面の存在に関する命題はさまざまなバージョンが存在するが、次のものを用いることにする。
このとき、
を満たすものが存在する。
が、有限次元射影定理から存在することがわかる。任意に
が得られる。従って、両辺から
が任意の
が得られる。
が得られる。
が成り立つ。
ここで、
となり、証明が終了する。
Farkasの補題の証明
(1)非負
(2)任意の
は同値である。
証明:
(1)ならば(2)を示す。非負$m$次列ベクトル
より主張が従う。ただし最後の不等号は、
(2)ならば(1)を示す。
(背理法)(1)が成り立たないとすると、
である。
有限次元の超平面分離定理から適当な
を満たすものが存在する。
特に
が得られる。また、もし
であるものが存在してしまうと、
となるように十分大きな
である。
このことはすなわち、
を満たす
(2)任意の
と矛盾する。
以上で証明を終了する。
補足:Farkasの補題は択一定理(Alternative)的な書き方を以下のようにすることができる。
(1)非負
(2)
のいずれか一方のみが成り立つ。
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