生保レディの営業実態 | 退職までの体験談

生命保険業界は、私たちの生活を支える重要な役割を果たしています。その中でも、生命保険の営業職は、お客様と向き合い、最適な保険プランを提案し、幅広いニーズに応える仕事です。

今回は、実際に生命保険の営業職を経験した方からお話を伺い、そのリアルな業務内容や魅力について綴ります。

目次

生命保険営業の業務

一般的に、生命保険営業は厳しい・困難という印象が持たれていると思われます。
生命保険は、人が病気になった際や万が一の事態に非常に重要な役割を果たしますが、現状健康である人にとってはその必要性を理解しづらい面があります。

そんな商品を取り扱う生命保険営業に対して、困難だと感じる方も少なくないでしょう。
そこで、3年間の生命保険会社での勤務経験を通じて得た知見や業務内容をここでご紹介したいと思いますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

入社までの経緯

生命保険会社への入社のきっかけは、かつて勤めていた会社が倒産し、突然仕事を失ったことでした。
サービス業で大手百貨店のテナント店舗に勤めていたのですが、会社が倒産し、全店舗が閉鎖される事態に陥り、転職活動もできずに無職になってしまいました。

当時、私は結婚したばかりで、夫が中等度の視覚障害を持っていたため、自分が何とか頑張らなければならない状況に置かれていました。
途方に暮れ、どのような行動をとるべきか分からない状態でいるとき、ちょうど加入していた保険の契約内容の確認のため、担当者が自宅を訪問してきました。

通常であれば、保険の内容だけを確認し終えることが多いのですが、その時期は精神的に落ち込んでおり、誰でも良いから話をしたいと感じ、担当者に自分の状況を打ち明けました。
私の話を聞いた担当者は「それなら、うちで働いてみませんか?」と提案し、私は喜んで面接をお願いしました。

生命保険会社では、一般的に求人広告を出すこともあれば、知人を紹介して入社させることも珍しくありません。
営業マンが多ければ会社にとって利益が上がるという考えが強い企業だったため、その場で担当者は会社に電話し、翌日に面接が設定されました

面接は簡単な説明で終了

私が勤めていた生命保険会社は、国内の保険会社の中で大手とされるカテゴリに属していました。
面接当日には、私の担当者と支社長が面接を担当してくれました。

一般的な面接でよくある「志望動機」や「将来のビジョン」などの質問はなく、業務内容や入社後の手続きについて淡々と説明されるだけでした。
その日のうちに、翌週の入社に問題ないか確認する電話がありました。

後になって分かったことですが、面接は名目上のもので、紹介された人はほぼ確実に入社できるというのが、私が働いていた会社の方針でした。

入社後の研修期間3ヶ月

入社後、3ヶ月間の研修期間が設けられました。同期入社者が4人おり、合わせて5人で毎日生命保険の仕組みや用語について学びました。
研修期間中には、「生命保険募集人資格」を取得することが必須でした。生命保険会社や代理店に所属する人は、この資格を持っている必要がありますが、難易度は高くなく、テキストや過去の問題をしっかり勉強すればほぼ合格できます。

業務に慣れてくると、ライフコンサルタントファイナンシャルプランナーなどの資格を取得する人もいますが、最初のうちは業務に専念するだけで精一杯で、資格取得の時間はありませんでした。

研修期間の3ヶ月間は、最低保証月給があるため、営業活動を行わなくてもある程度の収入が見込めました。研修室で毎日6〜7時間ほど勉強することは、私にとって特に苦ではなかったのですが、人によっては「今さら勉強するのは…」とストレスを感じる方もいるようでした。

生命保険会社特有の給料形態

私が働いていた生命保険会社では、最初の3ヶ月間だけ給与が保証され、その後は営業成績に応じて給与が決まる仕組みでした。
個々にノルマが設定され、ノルマを達成すれば最低保証の給与が得られます。

さらに多くの給与を得たい場合は、もちろん営業成績を上げる必要がありますが、1件あたりの報酬が固定されているわけではなく、ポイント制度が導入されていました。
保険商品や金額に応じてポイントが設定されており、ポイント数に基づいて給与が加算されます。

ポイントが高いものは、最新の保険や会社が特に推奨する保険、高額保険です。
細かくポイントを稼ぐよりも、一度に新しい契約を獲得する方が給与面では有利ですが、それはなかなか難しいため、多くの人は保険の切り替え損害保険との組み合わせなどを行っていました。

3ヶ月ごと職階査定が行われ、ノルマの達成状況や成績に応じて職階が決定されます。

職階によって最低月給や歩合の金額が異なるため、3ヶ月間の努力がどのように評価されるかは毎回不安でした。
ノルマ未達成の場合、職階査定基準に達しないと解雇されます。
査定時には胃が痛むほどの緊張を覚えており、生命保険会社で働いていた期間中に胃が急激に弱ってしまったことを記憶しています。

研修が終了後は即営業活動スタート

研修期間の3ヶ月が終了し、生命保険募集人資格を取得していれば、すぐに営業活動を開始します。
最初の1〜6ヶ月間は、先輩営業マンが指導に当たり、疑問点や悩みがあればすぐに相談できます。
指導期間に幅があるのは、個々の慣れ具合に差があるためです。
私の場合、約3ヶ月で先輩の指導を離れました。
自立のタイミングに明確な基準はなく、先輩が判断して大丈夫と感じたときがそのタイミングです。

私が働いていた生命保険会社では、毎朝入社1年以内の新人を対象にしたロールプレイが行われていました。
年齢や職業などの設定を決め、自分が考える保険やおすすめの保険を紹介するという内容でした。
先輩が顧客役を演じ、ロールプレイの後にアドバイスを受け、実際の営業に活かすことを目的としていました。
確かに参考にはなりましたが、実際の営業ではロールプレイ時のように丁寧に話を聞いてくれる顧客は稀であり、必ずしも実践的とは言えませんでした。
ロールプレイが終わった後は、それぞれが営業活動に出かけます。

個人への営業の流れ

入社前にイメージしていたのは、個人のお客さんに対して保険加入の提案をすることでしたが、実際に働いてみると、担当者が退職して担当がいないお客さんに対して契約内容の確認が主な業務でした。
もちろん、契約内容を確認した後に、現在の保険の進化やお客さんの家族構成・年収に合わせた提案を行い、保険商品の変更(切り替え)を促すことが目的でした。

しかしながら、お客さんによっては保険の見直しを面倒だと感じたり、「それならこの保険を解約する」と言って保険を辞めてしまう方もたくさんいました。
このような状況は、保険営業において常に直面する課題であり、お客さんのニーズや懸念を的確に把握し、適切な提案ができる営業スキルが求められる仕事です。

事前にリストがあるので、まずは1件ずつ電話をしてアポイントメントを取り、どのような話をするのか整理することから営業活動が始まります。
電話の際に怒っている方もいるため、そのような方には無理をせず謝罪し、電話を終えます。また、「知らないうちに担当がいなくなっている」など冷静に言われる方も多いので、最初の電話では基本的に謝罪や配慮の言葉が必要です。

アポイントメントが取れたら、先輩と一緒にお客様にどのような見直しが必要か検討し、設計書を作成します。
その後、お客様のご自宅に伺い、設計書をもとに保険の見直しについて説明を行います。
この過程でお客様のニーズや状況に合わせた提案を行い、最適な保険商品を見つけることが営業の目的となります。

自宅訪問では、契約内容の説明やお客様の困り事や心配事を聞くことが重要です。加入時と現在で保障内容が変わっている場合があるため、丁寧な聞き取りを行い、適切な提案を行うために用意した設計書を使います。
設計書はノートパソコンで簡単に作成でき、聞き取りの結果で不足がある場合はその場で修正できるため、柔軟に対応が可能です。

訪問は大体30分〜1時間程度かかり、そのため1日にたくさんの訪問を行うことは難しいです。
お客様との話がスムーズにまとまる場合もあれば、検討期間を設けて持ち帰りとなるケースもあります。
営業マンはお客様のニーズに合わせた提案を行い、最適な保険商品を見つけることを目指して活動しています。

個人の他は法人開拓

生命保険会社で働いていた際、最も苦労したのは法人開拓でした。
文字通り、知らない企業を訪問し、名刺を渡したり、昼休みなどに訪問したりして、〇〇保険の提案をし、資料を置いていく仕事でした。
この仕事は非常にメンタルが消耗するもので、個人宅に電話をして怒られるよりも厳しいものでした。

勤めていた会社の事務所は、ビジネス街のど真ん中にあったため、オフィスビルがたくさんありました。
先輩方は、「法人開拓は断られても気にしない。当たり前のことだと思っている」と助言してくれましたので、近くのビルに入って、1階から順番に企業を訪問しました。
しかし、10件訪問しても10件は断られると覚悟しておく必要があります。

中には、名刺を渡した瞬間にゴミ箱に捨てられたり破られたり帰れと言われるような企業もありました。
生命保険の営業マンを詐欺師のような目で見る企業が多く、そのような扱いを受けることはとても悲しい思い出です。
周囲の多くの人は「そんなものだ」と言ってくれましたが、名刺を捨てたり破ったりしなくてもいいのにと感じました。

飛び込み営業に加えて、教育担当の先輩がこれまでに営業した企業にも出向いたことがありました。
しかし、先輩が行っていたにも関わらず、全く相手にしてもらえず、目も合わず、話も聞いてもらえなかったため、ほとんど契約に結びつきませんでした。
長期間通い続けていた場合、話をする人もできたり、数件の契約も取れましたが、結局は誰もがお昼の自由な時間を保険の営業に割くことはもったいないと思っているのでしょう。

生保レディとしての限界

生命保険営業は、想像よりもはるかに厳しいものでした。多くの辛い瞬間がありました。

まず、給料が不安定で、3ヶ月に1回の職階査定で、毎回給料が大幅に変動していました。
そのため、家庭を守らなければならないという精神的な負担があり、「今回はいくらだろうか」「生活できるだろうか」という不安に駆られていました。
いつも不安で、胃が痛くてとにかくプレッシャーを感じました。次に、商品知識の習得が難しく、学習に時間がかかるため、プレッシャーを感じました。
最後に、親戚や友人から警戒の目で見られることもあり、社会的プレッシャーを感じました。

とにもかくにもプレッシャープレッシャーが重なりプレッシャーだらけの日々でした。

基本的に、生命保険営業は、企業に属していますが、個人事業主と同じく、確定申告も自分で行う必要があることも忘れてはいけません。

さらに、お客さんへの手土産食事代、ガソリン代、ボールペン代など、仕事に必要な経費は全て自己負担で、最初は自分で支払わなければなりませんでした。
つまり、会社はほとんど保障してくれませんでした。一般的な企業に入社した場合とは異なり、指示通り働けば安定した給与が保証されているわけではありません。
そのため、全て自分自身の行動にかかってくるという点で、自分ができる目標を設定し、努力を重ねました。
モチベーションはこの仕事においてかなり重要な要素であるため、リスクをどのようにポジティブに考えるかが、生命保険営業を続けていくためのカギでした。

また、保険商品は常に変化し、時代のトレンドに合わせて変化するため、それぞれの保険によって特徴や保障内容が異なります。
多数の保険商品の中で、顧客に必要な保険商品や保障の範囲などを考える必要があり、きちんと保険商品の内容を理解していないと、見当違いな商品を案内してしまう可能性があります。
顧客は、このような知識不足をすぐに見抜いてしまうため、日々保険商品の勉強をすることは大変でした。
ただ、この仕事を続けるためには必要なことであり、知識を増やすことは良いことだと自分に言い聞かせ、辛さを乗り越えました。
その結果、自分自身でも勉強になる部分が大きく、成長することができました。

自分自身はそんなつもりはなくとも、世間のイメージから、身近な人から警戒されることもあり、その時は辛かったです。ある友人が、保険に入ろうと思っていたため、純粋に必要な保障を組み合わせて設計書を作成し、渡しました。
しかし、後日友人から、「家族に反対されたため契約できない」と言われ、自分自身が何故そう言われたのか理解できませんでした。
近しい人間が保険を勧めてくる=過度な保障内容で提案していると思われたのかもしれません。
親御さんがそう思うのは仕方がありませんが、友人がそれを鵜呑みにして断った態度がとても悲しかったです。
以降、お互いの関係性を崩さないためにも、身内や友人には保険の話をしないよにしました。

限界を迎えて退職を決意

私が生命保険営業を退職したきっかけは、上司の異動でした。
生命保険会社では、上司の変更が頻繁に行われることがあります。
1課から4課まであり、それぞれに課長がいましたが、1年以内ですぐに異動するケースも多い中、私は4課に配属され、珍しく1年目に上司が変わって以降、ずっと同じ課長が在籍していました。

私の課長は非常に優しく、営業に悩んでいる時にも親身に相談に乗ってくれたり、一緒に営業回りをしてくれたりと、とてもアクティブな方でした。
しかしながら、課長が異動し、新しく赴任した課長も優しく話を聞いてくれる方でしたが、同時に数字にシビアな人でもありました。そのため、平均的もしくは良くない成績を残している営業マンに対してはかなり冷たかったです。
私自身も3年間は続けていましたが、成績は決して良くなかったです。

成績が良くない営業マンに対して、相談に乗らない、存在していないような扱いをする課長を見て、なんとなく嫌な気分になりました。
その頃から、徐々に自分の中で『生命保険営業をずっと続けていられない』という気持ちが芽生え始め、それが成績にも表れていたように思います。

退職する半年前から、法人開拓はしなくなり、個人営業もほぼできなくなっていました。
生命保険営業が続くタイプは、とにかく自分を貫ける人であり周囲に左右されない人です。私の場合は、営業がうまくいかない時は落ち込みますし、順調であればとことん物事がうまくいくタイプなので、周囲に左右されるといえばそうでした。

モチベーションが下がってしまったため、私は営業活動を積極的に行わず、外勤とは名ばかりの知り合いの事務所に行って、保険の営業を少しだけするような業務に就いていました。業務内容に目新しいものはなく、長期間勤務しているにもかかわらず業務に変化がなかったため、自分で1日の業務を決めることができました。

私は、会社に長期間勤めるよりも外勤をする方が気が楽だったため、毎日朝礼が終わるとすぐに外勤に出かけるようになりました。
生命保険会社で働く大きなメリットは、一般企業とは異なり、外勤後そのまま帰宅することができる点でした。
仕事は全て自分の責任で行う必要があったため、行動しなければ成績が悪化するのです。

私は職階査定基準を達成できずに退職することになりました。

まとめ

私が3年間勤務した間、営業活動に関しては特に変化がありませんでした。
最初にしっかりと研修を受けたため、ある程度の知識を身につけてから業務に就けたのは良かったです。
しかし、仕事は全て自己責任であることと数字に追われることがプレッシャーとなり、上司との関係も上手くいかなかったため、退職することになりました。

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