この記事では、確率変数のランダムな個数の和の確率変数の、積率母関数の導出を解説します。
確率変数のランダムな個数の和というのは、
「確率変数を何個足し合わせるか」自体もあるランダムな確率変数に従っていると言うことです。
例えば、サイコロがあったとき、サイコロを投げる回数自体を別のサイコロで決めることにすると、
サイコロの出目自体もランダムですし、サイコロを何回投げるかという試行回数自体もランダムになります。
このような、ランダムな個数の和のことを、確率和ということもあれば、混合和ということもあるそうです。
英語だと、compound sumだそうです。
ありがちなのは、回数の部分がポアソン分布に従うような状況ですね。
非負整数値をとる確率変数\(N\)と、\(N\)個の独立同分布に従う確率変数
\begin{align*} X_1, X_2, \ldots, X_N \end{align*}
があるとき、それらの和
\begin{align*} S = \sum_{i = 1}^N X_i \end{align*}
の積率母関数はどうなるのかを考えてみましょう。
確率変数\(X\)の積率母関数とは、
\begin{align*} M_X (t) = E(e^{tX})\end{align*}
により定まる関数のことでした。
ここで、記号を用意しておきます。\(N, X_i, S\)の積率母関数はそれぞれ\(M_N, M_X, M_S\)と書き表わすことにします。
結論から言うと、
\begin{align*} M_S(t) = M_N \left( \log M_X (t)\right) \end{align*}
となります。
実際この証明は簡単で、
\begin{align*} M_S(t) &= E\left(e^{t \sum_{i=1}^N X_i } \right)
\\&= E_N\left( E_X \left(e^{t \sum_{i=1}^N X_i } \mid N \right)\right)
\\&= E_N \left( \left( M_X(t)\right)^N \right)
\\&= E_N \left( e^{\log \left(M_X(t)\right)^N}\right)
\\& = E_N \left( e^{ \left(\log M_X(t) \right) N}\right)
\\&= M_N \left( \log M_X(t) \right) \end{align*}
と式変形することで証明できます。ただし、\(E_X, E_N\)はそれぞれ、\(X_i, N\)に関する期待値の計算を意味しています。
保険数理の文脈だと、しばし\(N\)は事故の件数で、\(X_i\)はそれぞれの事故の保険金であったりします。
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