行列のアダマール不等式の証明をわかりやすく解説

行列のアダマール不等式は正方行列の行列式と列ベクトルの積の関係を与える不等式です。

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行列のアダマール不等式の証明をわかりやすく解説

行列のアダマール不等式とはJacques Hadamardが1983に証明した定理で、
行列式列ベクトルのノルムに関する不等式である。

行列のアダマール不等式の証明

定理:アダマール不等式

\(A\)を\(n\)次実正方行列とする。
\begin{align*} | \det A| \leq \prod_{i = 1}^n || a_i || \end{align*}
が成り立つ。ただし、\(a_i\)は\(A\)の\(i\)列目。

実際、まず\(A\)に対してQR分解により直交行列\(Q\)と上三角行列\(R\)で
\begin{align*} A = QR \end{align*}
を満たすものが存在します。任意の\(j\)に対して
\begin{align*} a_j = q_1 r_{1j} + q_2 r_{2j} + \cdots + q_n r_{nj} \end{align*}
であるので、
\begin{align*} || a_i ||^2 &= ||q_1||^2 |r_{1j}|^2 + ||q_2||^2 |r_{2j}|^2 + \cdots + ||q_n||^2 |r_{nj}|^2
\\&= |r_{1j}|^2 +|r_{2j}|^2 + \cdots + |r_{nj}|^2
\\&\geq |r_{jj}|^2 \end{align*}
が得られます。2つめの等号は\(Q\)が直交行列なので、列ベクトルが全て単位ベクトルであることを用いています。

\(Q\)が直交行列なので\(|\det Q| = 1 \) であることと、
\(R\)が上三角行列なので\(| \det R | = \prod_j | r_{jj} |\)となることに注意すると、
\begin{align*} |\det A | = | \det Q| | \det R| = \prod_j | r_{jj} | \leq \prod_j || a_j ||\end{align*}
が得られます。

参考文献

Maz’ya, V. G., & Shaposhnikova, T. O. (1999). Jacques Hadamard: a universal mathematician (No. 14). American Mathematical Soc..

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